診療科・部門

救命救急センター・救急集中治療科

診療科紹介

2017年より県央医療圏唯一の救命救急センターとして始動して6年が経過ました。2023年には救命救急センターの西館移転に伴い救命専用病床は30床に拡充され、年間救急車応需件数は10,000台を超えました。本年度は救急科専従医15名(救急科指導医4名、救急科専門医12名、集中治療専門医4名、外傷専門医3名、精神保健指定医1名)と増員し、2024年4月より集中治療科を新設することで診療科名称を救急科から『救急集中治療科』として新たなスタートを切ります。

救急集中治療科はこれまで通り、救急搬送された患者様の初期治療全般を行い、入院加療を要すると判断した場合には専門診療科へコンサルトを行います。また、多発外傷、急性中毒、心肺停止、敗血症性ショックといった集中治療を要する重篤患者に対しては、救急専用病床や集中治療室において救急集中治療科が主科として入院後治療を継続します。現在は各診療科とともにsemi-closed type ICU managementを行なっていく予定ですが、今後はclosed type ICUを目指しております。

今後も増加することが予想される県央医療圏の救急搬送患者に対し、『断らない救急、その先に』をスローガンとして救急医療、集中治療に全力を尽くしてまいります。また、周辺医療機関との緊密な連携により、県央地域の医療機関、施設の力を集結した地域救急医療を構築することを目指します。

主な対象疾患・症状

軽症から重症(三次救急)まで救急搬送される患者様を幅広く対応します。また、診断が確定していない急変患者に関する近隣医療機関からの紹介も診察させていただきます。集中治療室では膜型式人工心肺を用いた呼吸・補助循環治療 (extracorporeal life support, ECLS) を必要とする重症度の高い患者を多く診療しております。

救命救急センターの生い立ち
2017年
神奈川県県央医療圏(人口約84万人)で唯一の救命救急センターとして認可。
東海大学救命救急医学教室の派遣を中心に救急科として専従医6名でスタート。
2020年
日本救急医学会指導医施設の認可
2022年
日本専門医機構・救急科領域プログラム基幹施設の認可
2023年
新棟移転により、救急専用病床が20床から30床に拡充。
2024年
救急集中治療科を新設
専従医15名(うち救急専門医12名、救急指導医4名、集中治療専門医4名)へ体制強化
救急集中治療科の特色
臨床

『断らない救急』と『社会復帰を目指した集中治療』の両立をテーマに掲げ、救急科専門医を24時間・365日救命センターに常時配置しております。年間約10,000件の救急車搬送患者に対する初期診療に加えて、多発外傷、敗血症、心停止後症候群等の重篤患者に対しては救命病棟、ICUで継続して集中治療を行います。特に経皮的膜型人工肺(ECMO)治療に関しては集中治療専門医を中心とした多職種による質の高いチーム医療の提供を目指しています。

働き方改革

救命センター開設当時から “完全シフト制”を堅持しており、救急科スタッフは週50時間以内の勤務としています。男性スタッフの育休取得も積極的に行っております。

教育

2023年に念願であった救急科領域プログラム基幹施設に認定され、医学教育をライフワークとしている医師が中心となり専攻医教育プログラムを構築しました。臨床研修医、専攻医は日常診療のOJTに加え、臨床業務から離れて学ぶ時間を確保することを目的に、毎週木曜日に“研修医セミナー”、毎週金曜日に“専攻医セミナー”を開催しています。これらのセミナーを通じて、講義やECMOシミュレーションなどのOff-JTを経験しています。

研修医の選ぶBEST指導医に当科スタッフが3年連続で選ばれました。

災害医療

地域唯一の救命救急センターとして、大規模災害・局地災害だけでなくCOVID-19対応を含めた様々な“災害”に対する備えをしています。このコロナ禍では実際にキャパシティを拡大し、地域のみでなく広く神奈川県全体からCOVID-19患者を応需しました。
救急科スタッフは東日本大震災を含めた実災害に対しての出動経験が複数回あり、またDMATインストラクターとして大規模地震時医療活動訓練(政府訓練)や関東ブロック訓練にもコントローラーとして参加しています。また災害協力病院として局地災害に即応できるよう神奈川DMAT-Lを編成し、ビッグレスキューかながわ等の訓練に参加しています。

施設認定
  • 日本専門医機構 救急科領域プログラム基幹施設
  • 日本救急医学会 救急科指導医施設
  • 日本専門医機構 集中治療科専門研修施設
取得可能な資格
  • 日本専門医機構 救急科専門医
  • 日本救急医学会 救急科指導医
  • 救急IVR認定医
  • 日本専門医機構 集中治療専門医
  • 日本脳卒中学会 認定脳卒中専門医

医師紹介

猪口 貞樹 (いのくち さだき) 顧問
大学 慶應義塾大学(1978年卒)
資格 日本救急医学会 救急科専門医・指導医
日本外科学会 外科認定登録医・指導医
日本消化器外科学会 認定医・指導医
日本熱傷学会 熱傷専門医
日本外傷学会 外傷専門医
日本高気圧環境・潜水医学会 高気圧医学専門医
東海大学医学部外科学系救命救急医学 客員教授
海上保安庁メディカルコントロール協議会 副会長
日本学術会議連携会員
山際 武志 (やまぎわ たけし) センター長 副病院長
大学 東海大学(2001年卒)
資格 医学博士
日本救急医学会 救急科専門医・指導医
日本外科学会 外科専門医
日本外傷学会 専門医
東海大学医学部救命救急医学 准教授
日本DMAT隊員
神奈川県地域災害医療コーディネーター
臨床研修指導医
若井 慎二郎 (わかい しんじろう) 副センター長・メディカルコントロール室 室長
大学 琉球大学(2002年卒)
資格 日本救急医学会 救急科専門医・指導医
日本外科学会 外科認定登録医
日本外傷学会 外傷専門医
日本集中治療学会 集中治療専門医
ICD 制度協議会認定 Infection Control Doctor
日本救急医学会 ICLS コースディレクター
AHA - ACLS インストラクター
JATEC シルバーインストラクター
湘南地区JPTEC 世話人
日本DMAT隊員(統括DMAT登録者)
日本DMATインストラクター
臨床研修指導医
湯川 高寛 (ゆかわ たかひろ) 医長 救急集中治療科部長代理
大学 東京医科歯科大学(2010年卒)
資格 日本内科学会 総合内科専門医
日本救急医学会 救急科専門医
日本集中治療医学会  集中治療専門医
臨床研修指導医
伊倉 崇浩 (いくら たかひろ) 医長
大学 近畿大学(2008年卒)
横浜市立大学 大学院修了
資格 医学博士
日本救急医学会 救急科専門医
日本精神神経学会 精神科専門医・指導医
精神保健指定医
ICLSプロパイダー
JATECプロバイダー
名取 穣治 (なとり じょうじ) 医員
大学 山形大学(1986年卒)
資格 医学博士
日本救急医学会 救急科専門医
日本外科学会 外科専門医
日本消化器外科学会 認定医
身体障害者福祉法第15条に基づく指定医師
外傷技能指導員臨床研修指導医
JPTEC世話人
MCLS世話人
JATECプロバイダー
日本医科大学 客員講師
大坪 里織(おおつぼ さおり) 医員
大学 愛媛大学(2002年卒)
資格 日本救急医学会 救急科専門医
医学教育修士 (イギリス カーディフ大学)
日本救急医学会 ICLSワークショップディレクター
JATEC インストラクター
臨床研修指導医
日上 滋雄 (ひがみ しげお)医員
大学 東海大学(2004年卒)
資格 日本救急医学会 救急科専門医
日本熱傷学会 熱傷専門医
日本外科学会 外科専門医
日本消化管学会 胃腸科専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
消化器内視鏡学会 専門医
臨床研修指導医
高田 忠明 (たかだ ただあき)医員
大学 横浜市立大学(2006年卒)
資格 日本救急医学会 救急科専門医・指導医
日本集中治療学会 集中治療専門医
日本DMAT隊員(統括DMAT登録者)
第三級陸上特殊無線技士
日本病院会認定 病院総合医
臨床研修指導医
土金 真人 (つちかね まさと)医員
大学 東海大学(2012年卒)
資格 日本救急医学会 救急科専門医
AHA BLSインストラクター
AHA PALSインストラクター
小児救急学会認定スペシャルインタレストメンバー
第三級陸上特殊無線技士
緩和ケア研修会修了
JSPEN NST医師セミナー修了
箕浦 安祐 (みのうら あゆ)医員
大学 聖マリアンナ医科大学(2016年卒)
資格 医学博士
日本救急医学会 救急科専門医
日本集中治療学会 集中治療専門医
日本医師会認定産業医
総合救急医学研究会 臨床研修指導医講習会修了
藤木 亜衣 (ふじき あい) 医員
大学 金沢大学(2017年卒)
資格 日本救急医学会 救急科専門医
日本航空医療学会認定指導者
五十嵐 康史 (いがらし こうし) 専攻医
大学 名古屋市立大学(2020年卒)
資格 緩和ケア研修会終了
AHA - ACLSプロバイダー
JPTECプロバイダー
大保 聡一郎 (おおぼ そういちろう) 専攻医
大学 筑波大学(2021年卒)
菅野 朋子 (かんの ともこ) 専攻医
大学 横浜市立大学(2022年卒)

臨床活動実績

救急患者受入れ数
  2021年 2022年 2023年
救急外来受診者数 12,938 14,711 16,266
うち 救急車の状況 要請数 7,599 9,893 10,718
受入数 7,048 8,818 10,061
応需率 92.7% 89.1% 91.0%
重篤患者数内訳け(2023年度)
疾病名 患者数 疾病名 患者数
病院外心停止 329 重症体温異常 15
重症急性冠症候群 181 特殊感染症 0
重症大動脈疾患 62 重症呼吸不全 78
重症脳血管障害 160 重症急性心不全 24
重症外傷 207 重症出血性ショック 4
四肢切断 0 重症意識障害 19
重症熱傷 1 重篤な肝不全 1
重症急性中毒 14 重篤な急性腎不全 4
重症消化管出血 69 その他の重傷病態 178
敗血症 622 合計 1968
ECMO治療総数の年次推移と治療成績

2017年の救命救急センター発足以来、重症呼吸不全、循環不全、院外心停止などに対して経皮的膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation: ECMO)を用いた集学的治療管理を行う症例は年々増加しています(表1)。

ECMO治療総数の年次推移と治療成績

ECMOを用いた心肺蘇生術(ECPR)を行った院外心停止58症例の社会復帰率は17%でした(表2)。市民啓蒙、プレホスピタル活動に加えて院内救急・集中治療体制を強化することで更なる社会復帰率の向上を目指します。

呼吸ECMO(VV-ECMO)を施行した重症呼吸不全30症例のECMO離脱率83%、生存退院率67%、社会復帰率60%でした(表3)。機械的人工呼吸器管理では治療困難な重症呼吸不全に対する肺保護戦略の一つとして地域医療機関からの紹介患者様を積極的に受け入れることで地域の救急・集中治療に貢献することを目指します。

院外活動

論文発表
2021年
  • Effect of Gram Stain-Guided Initial Antibiotic Therapy on Clinical Response in Patients With Ventilator-Associated Pneumonia: The GRACE-VAP Randomized Clinical Trial  JAMA Netw Open 2022; 5:e226136. J. Yoshimura, T.Yamagiwa
  • 虚血性膵炎,脾梗塞を合併したB型急性大動脈解離の1例. 日本救急医学会雑誌 2021;32:170-174 佐伯優美、湯川高寛、山際武志
  • Is resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta for computed tomography diagnosis feasible or not? A Japanese single-center, retrospective, observational study. J Trauma Acute Care Surg  2021;91:287-294. H.Otsuka, T.Yamagiwa
2022年
  • Analysis of Grade Classification for Prehospital Injury Severity Scores Applied in Shonan-area Medical Control Council. Tokai J Exp Clin Med 2022;20;47:31-35. S.Wakai
  • Efficacy of hand-assisted laparoscopic surgery (HALS) in older adult patients (≥80 years) with primary colorectal cancer. J Gastrointest Oncol. 2022;13:1073-1080. T.Koike, S.Higami
  • Severe Sacral Region Pressure Ulcer Infection Treated in Negative Pressure Wound Therapy with Instillation and Dwelling: A Case Report. Tokai J Exp Clin Med. 2022;47:52-55.M.Sugita, S.Higami
2023年
  • Electrical injury-induced ventricular fibrillation documented and treated with an implantable cardioverter defibrillator. Acute Medicine & Surgery. 2023;10:e876. S. Higami
  • Early restricted oxygen therapy after resuscitation from cardiac arrest (ER-OXYTRAC): protocol for a stepped-wedge cluster randomised controlled trial. BMJ Open 2023; 13:e074475. R. Yamamoto, T.Yamagiwa
  • Use of a Helicopter Emergency Medical Service Hangar as a Staging Care Unit in a Disaster-Affected Area. Air Med J. 2023;42:213-217. Y. Yanagawa, S.Wakai
  • A single-center retrospective analysis of the efficacy and safety of a modified regimen of irinotecan plus S-1 (IRIS) with molecular targeting agents as second-line chemotherapy in Japanese patients with recurrent or nonresectable colorectal cancer. J Gastrointest Oncol. 2023;29;14:663-675. S.Higami
2024年
  • 心尖部心室瘤を有する心室中部閉塞性肥大型心筋症に合併したKounis 症候群の一例.日本救急医学会雑誌 採択 菅野朋子、湯川高寛、山際武志
  • 新型コロナウイルス感染を契機に発症した気管支動脈瘤破裂による呼吸不全に対しVV–ECMOを導入し救命し得た1例. 日本救急医学会雑誌 2024年;35巻:85-90 長木紗矢果、湯川高寛、山際武志
  • 救急外来でdual energy CTによる診断を行った高齢者脊椎骨折の3例. 日本救急医学会雑誌 2024年;35巻:52-57 日上滋雄
  • Diphenyl-tetrazol-propanamide Derivatives Act as Dual-Specific Antagonists of Platelet CLEC-2 and Glycoprotein VI. Thromb Haemost 2024;124:203-222. N. Watanabe, S.Inokuchi

メッセージ・今後の展望

『断らない救急』と『社会復帰を目指した集中治療』を県央地域に提供します。

山際センター長が、地域医療連携の専門メディア「medigle PRESS」のインタビューを受けました。

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