当科は平成18年4月に開設されてから20年弱というまだ歴史の浅い診療科です。しかしながら検体数は着実に伸びており、またグループ施設の座間総合病院、およびカラダテラス海老名の診断も請け負っており、院内および地域医療における役割は日々増しているものと自負しております。
業務内容としては、病理診断、細胞診断、そして病理解剖(剖検)を三本柱とし、研修医を初めとする若手医師の教育や、各診療科の学会、論文作成のサポートにも注力しています。
診断においては、免疫組織化学的技法のみならず、遺伝子診断技術も積極的に取り入れて、最新の治療に適した病理診断を提供できるよう努めております。
当科は常勤専門医2名と専攻医1名体制で診療にあたり、週2日非常勤医師(本告匡)が勤務しております。その他、診療を支える常勤検査技術員(臨床検査技師)が7名、事務員が1名在籍しています。また、東海大学病理学教室からも病理医の非常勤医派遣を受けており、おかげさまで手厚い診療体制が構築されています。
地域連携における新たな試みとして、昨年度より連携施設の皆様に向けて臨床病理検討会(CPC)の公開を始めました。現状はWEB公開のみとなっておりますが、ご興味のある方は是非御参加下さい。
組織診断、細胞診断の対象となる全ての疾患
臓器を問わず診断をおこなっております。難解症例に関しては、東海大学や聖マリアンナ医科大学(腎生検)にコンサルテーションをおこない、的確な診断を出せるよう心掛けております。
当病理診断科における診療内容は、診療各科より提出された各種検体(組織、細胞)の病理診断、(病理組織診断、術中迅速診断、細胞診断)をリアルタイムに提供することです。
病理診断は、通常肉眼診断を基礎に、HE染色ないし一般特殊染色標本を用いた光学顕微鏡的な組織診断によって行われますが、疾患によっては免疫抗体を用いた特殊な検索も加えられます。
私たちは直接患者さんの診察を行いませんが、診療各科に受診中または入院している多くの患者さんからの検体を対象とした診断を行っています。
また、不幸にしてお亡くなりになった患者さんの剖検を行うことで、臨床的に不明であった病態を明らかにすると共に、生前に施行された医療内容に関する総合的な評価を行い、医療の質の向上と維持に貢献することの出来る情報を提供しております。
など
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現在、当病理診断科では病理支援システムにより病理業務における診療情報をコンピュータ管理していますが、これは病理診断を質の良いものにするために非常に重要で、病理スタッフが日常業務の効率的に行うためばかりではなく、臨床医が既往歴を検索する際および各種疾患の統計学的な検討を行う場合にも大変役に立つものです。
患者さんの病理診断のすべてをリアルタイムに検索することが出来るため、過去に当院を受診し病理診断を受けていた際には、経過中の疾患の進展状況あるいは軽快状況を容易に比較検討することが出来ます。また、新たに出現した病態と過去の疾患との関連性の有無に関する検討も容易に行うことが出来ます。
山田 正俊(やまだ まさとし) 部長 | |
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大学 | 弘前大学(2001年卒) |
資格 | 日本病理学会 病理専門医 日本病理学会 評議員 日本臨床細胞学会 細胞診専門医・指導医 厚生労働省認定死体解剖医 |
橋本 諒典(はしもと りょうすけ)医員 | |
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大学 | 筑波大学(2014年卒) |
資格 | 日本病理学会 病理専門医 厚生労働省認定死体解剖医 |
酒村 俊輝(さけむら としき) 専攻医 | |
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大学 | 新潟大学(2022年卒) |
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
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組織診断 | 7,246件 | 7,397件 | 8,105件 | 8,067件 | 7,579件 | 7,947件 | 8,123件 |
細胞診断 | 10,327件 | 11,783件 | 10,315件 | 9,447件 | 10,703件 | 11,799件 | 13,925件 |
迅速診断 | 114件 | 98件 | 101件 | 154件 | 149件 | 166件 | 147件 |
病理解剖 | 14件 | 15件 | 15件 | 8件 | 11件 | 17件 | 6件 |
臨床各科と密接な連携を保ち、患者さんの治療に貢献できるような病理診断を行うと同時に、各種疾患の本態を解明するために、病理技術の改善および新技術の導入を図り、組織診断、細胞診断能力を向上すべく努力致しております。
また、当病理診断科の特色として、病理医が常駐しているため、診断報告を短時日のうちに行うことが出来ます。
また、東海大学病理学教室との連携を行っており、難解症例や稀少症例に関して、合同での検討を行うことが出来るようになっております。
各種疾患の原因解明や腫瘍の良・悪性の判定を顕微鏡的観察により組織学的に行い、臨床各科(外科、内科、皮膚科など)が、患者さんを治療する際に役に立つ評価を行うための学問です。
大学の研究室などで動物に対して発癌実験や癌細胞移植を行ったり、動物に種々の病的状態を作製するといった研究を行う実験病理学と当院における病理診断科のように、患者材料(生検組織・細胞および手術的切除・摘出臓器)の病理組織学的判定(診断)を行う病院病理学(外科病理学)があります。これらは多少異なった視点から疾患を検討致しますが、いずれも最終的な目標は、病気の成り立ちを明らかにすることにより、各種疾患治療に役立つべく研究を行う学問と言うことが出来ます。
病気の成り立ちを如何なる方向から取り扱うのかと言いますと、臨床的には症状、血液生化学的なデ−タ、レントゲン検査などの画像による解析などから病気を解明しようとする学問であるのに対して、病理学・病理診断学では、臓器、組織、細胞に起こる構造の変化(形;形態の変化)を直接観察することによって病気の成り立ちを考える学問(形態学)です。
当病理診断科では、内視鏡検査あるいは外来診療中に採取された組織(胃粘膜、大腸粘膜など)や細胞(婦人科スメア、尿、胸水、腹水中など)の検査を行う組織診・細胞診、手術中に良・悪性などの緊急判定を要求される術中迅速診断(組織診・細胞診)、手術的に摘出された臓器の診断(癌の広がり、リンパ節転移の有無など)を行う病理組織診断および、不幸にして在院中に無くなった患者さんの死因検討および病因解明のための病理解剖(剖検)が行われています。
以下に私たちが日常診断している一般的な症例の画像を供覧致します。
細胞の変化(異形成)の有無・程度および癌の有無など評価致します。
上記の診断を正確に行うことにより、治療、治療評価および補助療法に役立つよう努力しております。